ほめるとはなにか?
そもそも『ほめる』とは何のためにおこなうのか?
それは相手の『承認欲求』を満たすため。
承認欲求とは、人からほめられたい、認められたい、尊敬されたい、という欲求。
マズローが提唱した『五段階欲求』では上から二番目にくるほど承認欲求を満たされることは喜びの大きなものであり、また現代人の多くは渇望状態にあります。
ゆえに、承認欲求を満たしてくれる相手を、人は好きになる。

また、『ピグマリオン効果』といって、人は相手から期待をかけられると、そういう人物を演じる傾向があります。
ほめることにより、相手をやる気にさせ、変容を促すこともできるのです。
ほめるためのマインド
まずは『ほめ』に対する土台となる考え方。
心からほめる
当たり前のようだけれど、できてない人は多いです。
基本的に、本音・本心からでなければ、どんなに言葉だけを覚えて使っても、相手の心には届きません。
それどころか、嘘くささや皮肉っぽさが出てしまい、逆効果にさえなってしまいます。
うまくほめられない原因としては
・慣れていない
・照れる、恥ずかしい
・ほめにくい関係性
・上から目線にならないか、逆効果にならないか不安
・どこをほめればいいかわからない、ほめるところが見つからない
などなど。
日本人は特に、相手をほめることが苦手な民族と言われています。
ほめ慣れても、ほめられ慣れてもいない。
とくに相手が異性や上司、もしくはライバルだったりすると、照れたり委縮したりプライドが邪魔したりでほめられない。
照れる・委縮するはハト、プライドが邪魔するのはタカに多い傾向ですね。
またほめるという行為は上から目線となりやすい。
それを分かっているからこそほめるのが苦手という人も。
こちらもハトに多い。
そしてほめ方が分からない、ほめる場所が見つからないという理由も。
フクロウやタカに多い傾向で、自分の中に高い基準を持っているため、その「おめがね」にかなわない人は彼らにとってほめるに値しない。
人をほめるのが得意なのは、感情を表すのが得意なクジャク。
思ったことを口に出すので、素直に自然にほめられる。
ただし、感情の起伏が大きい気分屋で、嫌いな相手には嫌いという感情も素直に出してしまうため、そこは要注意。
相手をほめるポイント
基本的な心構えを分かった上で、まずはほめるポイントを紹介。
【ほめるポイント】
・長所をほめる
・短所をほめる
・外見(変化)をほめる
・内面(能力)をほめる
順に解説。
長所をほめる
当然のようだが、基本的なこと。
「仕事が丁寧」や「資料作りが上手」など、長く付き合っていると長所は当人にとっても周りにとっても当たり前になってしまいがち。
だからこそ逆に、長所をほめるだけでそれは特別なことに。
文頭に「やっぱり」や「いつも思っていたけど」という言葉を入れると、ふとした時でも使いやすくなります。
短所をほめる
正確には、短所を長所に変えてほめる。
短所と長所は表裏一体、相手の個性や性格をどう捉えるか。
発想の転換が大切。
例えば
短気で怒りっぽい人→感受性の強い人、完璧主義で責任感が強い人
自分の考えを曲げない頑固な人→芯の強い人、信念を持っている人
否定的でネガティブ発言が多い人→リスクによく気が付く人、多角的に物事を見れる人
外見(変化)をほめる
よく「外見をほめるのは良くない」といわれますが、そんなことはありません。
男性だろうと女性だろうと、ほめられればそりゃ嬉しい。
ただ忘れてはいけないのが「外見ばかりほめない」ことと、可愛い人カッコいい人ほど外見はほめられ慣れているということ。
外見でも、自分の変化に気付いてほめてもらえると人は喜びます。
新しい髪型やメイク、おろしたての靴やスーツ…
新たな装いをしたときは「何て言われるか…」とそわそわしてしまうもの。
そこで「センス良いね!」「似合ってる!」とほめてもらえたら、安心できるし嬉しいですよね。
気をつけるポイントは、『以前』も否定しないこと。
内面(能力)をほめる
前述したように外見ばかりほめると、「そこしかほめるところがないのか」と思われたり、女性だったら下心を感じてしまったり。
内面をほめる時に注意するポイントは、「断定口調でほめない」こと。
「〇〇さんって、□□だよね」と決めつけたような言葉はオススメできません。
上から目線感が出てしまうのと、相手がほめてほしい部分とズレていたりすると
「私はそんなつもりじゃない」と逆効果になることも。
相手がどこに力を入れているのかを考え、あくまでも「自分はこう感じた」という言葉遣いで伝えましょう。
ほめにくい相手はどうする?
ほめにくい相手をほめるにはどうすれば良いでしょう?
たとえば、目上の人やライバル。
目上の人をほめる時は注意。
気をつけないと、偉そうな物言いに聞こえてしまい、失礼なヤツととらえられてしまいます。
目上の人をほめる時のポイントは、『感想+頼らせて』をセットでほめる。
例えば
社会的立場をほめた後に
「自分もそういう立場になりたいです!」「これからもご指導お願いします!」
ファッションをほめた後に
「私もそのセンス学びたいです!」「今度服選びのコツを教えてください!」
「私もあなたみたいになりたい」という感想は相手に響きます。
次に、ライバル。
「ライバルなんてほめなくてもいいじゃないか」
と思われるかもしれませんが、対抗心を燃やして敵を作っても良いことありません。
ライバルとも仲良くなり味方に引き込んでおくことで、困ったときに力を貸してくれるかもしれない。
「器の大きい人間だ」と周りからの評価も上がるでしょう。
ライバルをほめる時のポイントは、心構え。
つまりどんな気持ちを持つかということ。
ほめるというのは、対象の良いところ、優れている部分を正しく認識し、要点をまとめる行為。
ライバルの良い部分を説明できるほど観察し要点をまとめたならば、それはライバルの分析であると同時に、自分にとって伸ばすべき部分、成長のきっかけにもなります。
「売り上げ一位おめでとう。お前のお客さん、みんなリピートしてくれるよな~」
(なるほど、販売単価よりも販売回数を増やす施策をしているわけか…)
「鉄壁の防御、いつみてもさすがだよな~」
(そうか、勝率が高いのは、得点より失点を抑えているからなのか…)
ついでに言うと、私たちの脳は、『主語』を認識できないと言われています。
つまり発する言葉(思うだけでも同じ)はすべて自分に向けられたものと理解してしまう。
ライバルに「負けろ!」「失敗しろ!」という言葉を投げかけると、それは自分自身に「負けろ」「失敗しろ」と言っているのと同じことなのです。
タイガーウッズは、勝ちたいときほど、相手の成功を祈るそう。
相手をほめると、脳は自分がほめられたと思い、気持ちが良くなり、自信向上にもつながるのです。
敵の分析ができて、自分の伸ばすべき部分を知ることができ、周りからの評価が上がり、脳の認知で自信向上し、仲間となって力を貸してくれるかもしれない。
ライバルをほめるのは、実は一石五鳥の行為なのです。
ちなみに「褒める」と「誉める」はどちらも意味は同じですが、それぞれ漢字が持つ意味によって使い分けされています。
「褒」は良い行いをほめたたえることを意味するため、相手の行いを認め、評価する場合。
評価に重きを置いているので、目上の人に対して使うと失礼に当たるので注意が必要です。
一方「誉」は、名誉や栄誉などに使われる漢字で、偉業を成し遂げた場合など誰しもが優れていると認める場合に使われます。
尊敬の気持ちを込めた言葉なので、目上の人を「ほめる」場合はこちらのイントネーションになります。
ハタフク別ほめ方
それではここからいよいよ、ハタフク別、嬉しいほめられ方
それぞれの価値観には、どういったほめ方がより効果があるのか見ていきましょう。
【タカ】
・結果をほめる
・質問形式でほめる
・ストレートにほめる
【ハト】
・プロセスをほめる
・ふたりきりでほめる
・具体的にほめる
【フクロウ】
・数字を入れてほめる
・第三者を使ってほめる
・生徒スタンスでほめる
【クジャク】
・真剣にほめる
・人前でほめる
・センスをほめる
タカ
結果をほめる
タカの司るエネルギーは『達成』
仕事に対する工夫やプロセスよりも、達成した結果にフォーカスしてほめると喜ばれます。
質問形式でほめる
「どうしたらそんなに英語が話せるようになるの?」や
「なんでそんな売上げ叩き出せるの?」
というほめ方は相手を格上に認めているニュアンスを含むため、タカは特に喜びます。
ストレートにほめる
「すごい!」「かっこいい!」「可愛い♡」
小細工なし、補足説明なし、どストレートな表現が大好物。
ただしわざとらしかったり、嘘くさくならないように注意。
※クジャクにも『ストレートにほめる』は有効。
ハト
プロセスをほめる
ハトの司るエネルギーは『調和』
仕事に対する成果よりも、どんな工夫をこらしたか、周りとどんなチームワークで取り組んだかといった、プロセスをほめると喜ばれます。
ふたりきりでほめる
目立つことが好きでない彼らにとってほめられるという行為は、最大の目立ちイベント。
そのため大勢の人前で派手にほめられると、嬉しいよりも『気恥ずかしい』や『申し訳ない』が先行してしまい、素直に受け取ることができません。
ほめるという行為は、素直に受け取ってもらうためのお膳立ても大事になってきます。
※フクロウをほめる時も、ふたりきりでほめましょう。
具体的にほめる
曖昧なほめ、理由を付け加えていないほめは、相手にとって喜びが薄く、下手したら不信感を与えかねない。
ハトは特に心のガードが固いので、なぜほめているかの理由を添えてあげる事が大切。
※フクロウにも『具体的にほめる』は有効。
フクロウに対してシンプルなほめ言葉、理由を添えない単調なほめは、伝わらないばかりか
「体よくほめて、どうせ上手いように扱おうと考えてるんでしょ」
とひねくれて受け取られ、逆効果となってしまう場合も。
フクロウ
数字を入れてほめる
フクロウが司るエネルギーは『探究』
彼らは曖昧なものよりきちっと枠にはまった明快な答えを求めます。
ほめに対しても、誰がみても明らかな数字で評価されるのが嬉しい、というか納得がいく。
第三者を使ってほめる
第三者の話は客観性が増すので、信憑性が高く感じられる。
また、その場にいない者の声のため、相手は謙遜も否定もできないので素直に受け取らせることができます。
またこれは対フクロウに限らず、素直にほめる事が苦手な人も、第三者の言葉を借りるので、実行しやすいほめ方ではないでしょうか。
生徒スタンスでほめる
「私も興味あるから色々知りたい」「もっといろいろ教えてほしい」
と、『あなたの知識を称賛しています』という姿勢を見せる。
先生に仕立て上げる、という言い方でも良いかもしれません。
※タカにも『生徒スタンスでほめる』は有効。
クジャク
真剣にほめる
クジャクが司るエネルギーは『愛情』
だからこそ、普段の雰囲気とは一線を画すような真剣さでほめると、大きな感動となる。
人前でほめる
目立つことが生きがいのような彼らにとって、ほめられることもエンターテインメント。
あえて人前でほめ、まわりの人からも「やったね」などと賞賛されたら、クジャクはそれだけでメシ三杯はいけます。
※タカにも『人前でほめる』は有効。
センスをほめる
「今日の服装(髪型)、センスがいいですね」とほめる。
これは相手の外見をほめたいときにも有効。
服装や髪型など「そのもの」をほめるのではなく、それを選んだセンス(才能)としてほめると効果的。
ほめ慣れしていく
他にも、ほめ方・ほめ言葉は沢山あります。
上記の例を参考に「このほめ方はこのタイプには特によく効くのでは…」
という仮説をたて、たくさん実践してみてください。
基本的に、どんな形であれほめられることは嬉しいもの。
ハトやフクロウの「人前ではほめられたくない」のような少数のケースを除いて、『心からほめる』さえ忘れなければ、マイナスに働くことはほぼありません。
円滑な人間関係を築くため、どんどん『ほめ慣れ』していきましょう。
この章の課題
ご褒美:この課題をクリアしたら…
♪
・上記セリフを参考に、身近にいる人物をイメージし、その相手に物事を伝える想定で具体的ほめ言葉を作ってみましょう。
【1人目】
名前:
ハタフク:
関係性:
メッセージ:
【2人目】
名前:
ハタフク:
関係性:
メッセージ:
【3人目】
名前:
ハタフク:
関係性:
メッセージ: