会話の途中で沈黙が訪れることを怖がる方は多いようです。
「自分と話すのがつまらないのかな?」「話題が面白くないのかな?」「嫌われたかな?」
と色々考え、「何か話さなきゃ」と焦ってしまう。
そんな場面を繰り返していると人と話すことへの苦手意識が強くなってしまいます。
しかし、沈黙もコミュニケーションのひとつであり、悪いものでも恐れるものでもありません。
沈黙の役割
沈黙にも役割があります。
それは
・休憩時間
・安定感、信頼感を与える
順に説明します。
・休憩時間
ずっと喋りっぱなしでいると、相手は疲れてしまうし、集中もとぎれ話の内容が頭に入ってこなくなります。
相手を疲れさせてしまっては、良質なコミュニケーションとは言えません。
会話は相手とのキャッチボール。
絶え間なく話されると、訊きたいことやふと思ったことが出てきても、口を挟む隙がありません。
そんな中で理解するのに時間がかかる言葉など出てきてしまったら、もう相手は混乱状態。
「さっきの言葉ってなんて意味だっけ…あれっ、今なんて言ってたんだろ?えっと話の流れから察するとこんなことを言ってたのかな…あ~また聞き逃した…で、さっきの言葉ってどんな意味だっけ…」
こんな状態になったら、とてもじゃないけど楽しい会話とは言えませんよね。
話の区切りでいったん間を置き、理解できているか、付いてきているか確認する。
セミナーやプレゼンの場では「分からなかった部分ありますか?」と訊いてあげる。
早口で情報をひたすら話し、相手が考える時間をあえてなくさせる説得の技法もありますが、通常のコミュニケーションにおいてそれは不要。
気になったところはなんでも訊いてね、いつでも話してね、くらいゆったりした間がある方が相手はリラックスでき、結果的にこちらのほうが楽しい会話だったと思ってもらえます。
またこれは、自分自身に対しても全く同じ。
沈黙を恐れるあまり、間を置かず一気に話し続けていると、実際は自分自身も集中が途切れてしまいます。
あまりにも喋り過ぎて、話が脱線に脱線を重ね、結局なにを喋りたかったんだっけ…あの話をしたかったのにもう戻れないな…といった経験はないでしょうか?
沈黙は、相手にとっても自分自身にとっても、休憩時間となるのです。
・安定感、信頼感を与える
矢継ぎ早に話をされると余裕がなさそうに、自信がなさそうに見えてしまいます。
また口数が多いと「軽々しい」という印象が生まれてしまうもの。
堂々と沈黙を保っていれば、少ない言葉の中に「信憑性」を与えることができます。
例えば…
Aさんは聞いてもいないことまでどんどん話してくるので、内容が頭に残らない。
質問したくてもこちらが質問する間も与えてくれない。
せわしなく話し続けるので、自信が無さそうに見え小者感がハンパない。
こうなるともう、さっさと帰ってくれと思うようになり、感情的にも商品を買いたいなんて思わなくなる。
Bさんはこちらの理解に合わせ間を置きながら説明し、何度も「ここまでで分からないことはありませんか?」と確認しながら、言葉を止めて考える時間を与えてくれる。
質問したら答えてくれるが、それ以外に余計な説明は来ないので、頭の中も整理しやすい。
こちらが考えている間ずっと待っていてくれるので、自身に満ち溢れているように見えて、商品にも安心感があるように思えてくる。
同じ商品でも、どちらの営業マンから買いたいと思うでしょう?
沈黙もコミュニケーションのひとつ
沈黙は悪いものでも恐れるものでもなく、立派なコミュニケーションのひとつ。
会話のネタを探してまで隙間を埋めることはありません。
隙間を埋めるために別な方向から話を持ってきたがために、かえって雰囲気が悪くなるなんてことも。
『沈黙の時間』は言葉がないだけであって、相手との会話は終わっていません。
一番ダメなのは、言葉が途切れたときにビクビクおどおどしてしまうこと。
コミュニケーションは双方向と言った通り、こちらがビクビクおどおどした沈黙をしていると相手も居心地悪い状態に陥ってしまいます。
そうしたら
「何か喋りにくかったな、次はもう二人きりでは会いたくないな…」
という印象を残してしまうかも。
キョロキョロ目を動かしたりせず、堂々としていましょう。
だからと言って、無表情もあまり良くないですよ。
沈黙したまま無表情では「怒ってる?」状態になってしまうので。
少しだけ口角を上げて穏やかな表情を作り、「これは意味ある沈黙だ」と言い聞かせ、少し深めにゆっくりと呼吸をする。
態度に脳は騙されるので、堂々とたポーズをとっていれば自然と気持ちも落ち着いてきます。
そうすればその雰囲気も相手に伝わり、自然なタイミングで向こうから話しかけてきてくれて、そこからまた話が発展するかもしれません。
その時は、ちゃんとリアクションを忘れずに。